いま広報・PR担当が対応すべき、レピュテーションマネジメント・風評被害対策とは
今回のテーマは、企業の評判・世評を管理する『レピュテーション・マネジメント』。
大手飲食チェーンや通信会社が、意図していないトラブルや不祥事を巡り連日大きくニュースに取り上げられていたことが記憶に新しいですが、意図していないトラブルが起きた場合、広報として、どのように対応するべきなのでしょうか。また、事前に対策できることはあるのでしょうか。トレンドであるTikTokなどのSNSを用いたコミュニケーションにおいても非常に重要な「風評被害対策」「レピュテーションマネジメント」について、今回はご紹介します。
レピュテーションマネジメントとは?
「レピュテーション・マネジメント」とは、言葉のとおり、「レピュテーション(reputation、評判・世評)」を「マネジメント(management、管理)」することであり、企業が自身の評判を高めたり、風評被害や悪い評価への対策や対応をしたりすることを指します。
今回は、極力「マイナス」の評判が発生しない・広まらないようにするための対応方法にフォーカスしてお伝えします。
①リスクマネジメント:企業に起こりうるリスクを予め正確に予測・把握し、事前に対策すること。
②クライシスマネジメント:緊急事態が発生した際の情報発信、問い合わせ対応など。
リスク対応に関しては、事前・事後それぞれの対策が非常に重要になってきます。
(改めて…)風評被害とは?
風評被害は、事件や自己、噂などをきっかけに時には事実ではない情報も含めて拡散されてしまうことです。その結果、会社の売上や株価、ブランドイメージに甚大な影響を与えることもあります。
近年多くの企業で不祥事が発生し、その対応の拙さ・不誠実さから更に炎上、批判的な報道が連日繰り返されることも少なくありません。不祥事後に企業がどう対応したのか、素早く正確な情報を開示したのか、その姿勢は適切なのかなどが、メディアや生活者の心情を大きく左右します。小さなリスクが対応により拡大してしまうケースも見られ、クライスシスマネジメントの役割もますます重要になっています。
ここからは、事前準備と、問題発生後の対応についてそれぞれ解説していきます!
リスクマネジメント(事前対策)
まずは、リスク発生前の事前準備の部分について。どれだけ準備していても、リスク発生をゼロにすることはできません。意図しないトラブルは必ず発生するものです。そのトラブルについて、意図していないものでも“予測できていたかどうか”ということは、その後のリスクによる影響の大小に大きくかかわってきます。
ここでは、適切な事前対策をすることにより、極力リスクを発生させない・リスクの影響を最小限にすることの重要性をお話します。
リスクマネジメント
企業として存続・発展していく上で障壁となるリスクを正確に把握し、それらのリスクの対策を講じることをリスクマネジメントといいます。危機の予防や、平時における危機に関連する情報の理解を進める活動です。それでは手順を見ていきましょう。
①リスクの洗い出し
まずは、企業・団体にとってリスクとなる事象を洗い出します。
例えば、地震や火災などの災害リスク、顧客情報などの情報漏洩リスク、システムダウンリスク、株価急落リスクなど、カテゴリごとにそれぞれ網羅的に洗い出ししましょう。様々な部署の関係者を巻き込み洗い出しをすることにより抜け漏れを減らすことができます。
具体的なリスクの例としては、
・指示ミスによるサービス利用停止、サーバーダウン
・飲食店での異物混入
・ユーザーの事実と大幅に反する口コミ(購入したばかりの冷房が全く効かない、●●クリーナーで掃除をしたが汚れが全く落ちない、●●化粧品を使ったらニキビが悪化した、など)
・社員によるセクハラなどの不祥事
などがあります。
②リスクの分析
洗い出したリスクを評価・整理します。評価の基準としては、そのリスクが発生する頻度、どのような被害が起きるのか、どの被害の大小、どのくらい広まる可能性があるかなどがあります。そして評価したそれぞれのリスクを、リスクマトリクス上にプロットし、整理してみましょう。
③リスクに対応する
リスクの優先順位が設定できたら、次はその対応策について検討します。リスクの評価が高い順に、事前にできることがないか、精査します。
対応策の例としては、
・リスク頻度を軽減させるためのマニュアル策定
・緊急時のルール策定
・根拠となるデータやファクトの準備
・事業撤退
などがあります。
極力リスクを発生させないこと、発生頻度を下げること、発生した場合の影響を最小限にすることを目標に対応しましょう。
いかがでしたでしょうか。
続いて、リスクが発生してしまった後の対応についてご説明します。
クライシスマネジメント(リスク発生後の対応)
ここまでご紹介したリスクマネジメントは、起こりうるリスクについての対応を指すのに対し、クライシスマネジメントは一般的に、緊急事態が発生した際の対応を指します。主に危機発生後の対応には、メディアやステークホルダーに対しての情報提供・説明を行う活動(クライシスコミュニケーション)があり、PRや広報の大きな役割の1つです。
近年多くの企業で不祥事が発生し、その対応の拙さ・不誠実さからより事態がより大きくなることでメディアの格好の的になり、批判的な報道が連日繰り返されることも少なくありません。クライシスが発生したのちは、発生後にどのように企業が対応したのか(情報開示方法や、記者会見での発言内容・姿勢など)、対応のスピードなどを生活者は重要だと考えています。小さなリスクが対応により拡大してしまうケースも見られ、クライスシスコミュニケーションの役割はますます重要になっています。
それでは、リスク発生後に備え、どのような準備ができるでしょうか。
①メディアトレーニング
記者会見時に対応するであろう、企業トップや役員の、メディア対応のトレーニングを事前に行うことで、発表者の対応レベルの低さから、さらなる炎上を招くことを予防します。トレーニングでは、このクライシスが発生した際にはこのような説明をする、このような内容は発言しない、このような質問が来たらこう答える、など実際にクライシスが発生した場合とのような質問がメディアから来そうであるか具体的にイメージしながらスクリプトを準備しておきます。
②対策本部の設置
クライシスが発生した際には、誰がどの役割をつとめ、どのようなフローで情報連携するのかを決めた、「緊急対策本部」を迅速に設置します。役割としては、緊急対策本部長/事務局(リスク管理部署)/本部員(執行役員や機能本部長など)/専門対応チーム(クライシスごとの、現場対応人員)/広報(情報開示・伝達など)があります。
全容の把握を迅速に行い適切な対応方針の策定、メディア・顧客・株主をはじめとしたステークホルダーへの事実の共有が求められます。
いかがでしょうか。
リスク対策については、外部の専門家に依頼して実施するケースもありますが、まずは広報・PR部門としてできることから初めてみる、というのもひとつです。